犬種や体重の都合で客室に同乗できず、国内線の飛行機でペットを預け荷物として貨物室に託すしかない飼い主さんへ。業界5年のわたしたち編集部が、貨物室の実態と預けられない条件、出発前の準備、預けるかどうかの判断軸を、ANA・JAL・スカイマークの公式資料から中立に整理しました。
目次
飛行機でペットを預け荷物にする国内線の前提: 客室ではなく貨物室に乗る

国内線では、飛行機にペットを預けると客室ではなく貨物室に乗ることになります。2026年8月時点で客室に同伴できるのは、スターフライヤーの「FLY WITH PET!」だけです。1区間5万円で、指定サイズのケージに入る小型の犬猫に限られます。ANA・JAL・スカイマークはいずれも空港カウンターで預かり、貨物室 (バルクカーゴルーム) に搭載する運用です。ジェットスターやピーチといったLCCは、そもそもペットの預け入れに対応していません。
「預け荷物」という言葉には、実は2つの意味が混ざっています。飼い主さんが同じ便に乗り、ペットを受託手荷物として預けるケースと、飼い主さんは乗らずにペットだけを航空貨物として送るケースです。JALでは、ペットとクレートの合計が32kg以上になると受託手荷物ではなく貨物扱いになります。スカイマークもペットとケージの合計32kgまでが預かりの上限で、大型犬の飼い主さんはこの数字が最初の壁になります。
貨物扱いになると、窓口は貨物部門 (ANA Cargoなど) に変わり、条件やクレートの基準も別立てです。とはいえ、乗る場所は同じ貨物室です。環境の実態は共通なので、本記事ではANA Cargoが公開している詳しい資料も一次情報として使います。
料金や客室同乗の3社比較は、姉妹記事の国内線ペット料金と客室同乗の3社比較にまとめてあります。本記事はその先、「預けたうちのこが貨物室でどんな環境に置かれるのか」に絞って見ていきます。
注意点1: 貨物室の環境は客室と同じではない
結論から言うと、貨物室には空調がありますが、客室と同じ快適さが保証されているわけではありません。スカイマークは「客室と同じ環境 (気圧・温度・湿度) に保たれた貨物室で預かる」と説明しています。その上で「外気温の影響を受け、客室とは異なる環境になることも考えられる」と添えています。ANA Cargoにいたっては、貨物室内の環境は動物の健康状態に影響を与え、「衰弱もしくは死傷する場合がある」とはっきり書いています。航空会社自身がここまで書いている事実を、まず知っておいてほしいんです。
温度・湿度: 空調はあるが外気温と屋外作業の影響を受ける
貨物室の温度・湿度は空調機で管理されています。ただしANA Cargoは、特に夏場は気温や反射熱の影響で高温になることも考えられる、としています。さらに搭載作業は屋外で行われるため、夏場や冬場は温度・湿度に大きな変化が生じる場合があります。JALも夏季 (5月1日〜10月31日) は高温多湿になるとして、外気温の影響を受けやすい日中の時間帯を避けるよう勧めています。冬季については、地域によって外気温が零度を下回る点にも触れています。
搭乗前の預かり場所については、各社とも配慮しています。JALは空港内の手荷物置き場に空調がないため、出発直前までカウンターで預かり、飛行機まではカートで運びます。スカイマークも出発間際までカウンターか空調のきいた保管スペースで預かり、貨物室では揺れで動かないよう固定します。ANA Cargoは出発の50分前まで、直射日光の当たらない風通しのよい環境で預かる案内です。
照明と音: 飛行中は暗室、離着陸時は大きな音
飛行中、貨物室の照明は消えて暗室になります。離着陸時や飛行中はエンジン音・機械操作音・風切り音が聞こえ、搭載や取り降ろしの時は地上車両のエンジン音や走行音も加わります。スカイマークとANA Cargoがほぼ同じ文言で公開しており、どの会社でも起きることだと考えてよさそうです。
真っ暗な中で大きな音が続き、隣には見知らぬ手荷物や貨物が積まれている。うちのこにとっては、飼い主さんの姿が見えないまま初めての環境に置かれる時間になる、と想像しておくのが実態に近いと思います。
注意点2: 預けられない犬種・体調がある
短頭種と体調のすぐれない子は、そもそも預かってもらえないことがあります。会社ごとにルールが違うので、うちのこの犬種と当日の様子を照らし合わせてください。
短頭犬種のルールは3社で違う
短頭犬種 (鼻の短い犬種) の受託ルールは、2026年8月時点で3社3様です。JALはブルドッグとフレンチブルドッグを通年で受託不可とし、パグ・チン・ボストンテリアなどその他の短頭犬と両犬種の雑種は預けられます。ANAは毎年5月1日〜10月31日の夏季に、ブルドッグ・フレンチブルドッグなど13犬種 (ミニチュア○○も含む) の預かりを国内線全路線で停止します。スカイマークは、パグ・シーズー・ボストンテリア・ペキニーズ・チン・ボクサー・ブルドッグなどの短吻種犬を、期間の限定なく預かっていません。
| 航空会社 | 短頭犬種の扱い | 期間 |
|---|---|---|
| JAL | ブルドッグ・フレンチブルドッグは受託不可 (その他の短頭犬・雑種は可) | 通年 |
| ANA | 13犬種 (ミニチュア含む) の預かりを停止 | 毎年5月1日〜10月31日 |
| スカイマーク | パグ・シーズー・ボストンテリア・ペキニーズ・チン・ボクサー・ブルドッグ等の短吻種犬は預かり不可 | 通年 |
なぜここまで厳しいのか。ANA Cargoの解説では、短頭種は長頭種に比べて軟口蓋 (気道の奥) が垂れ下がっています。そのため高温期に呼吸が荒くなると気道を塞ぎやすく、窒息する危険があるとされています。スカイマークも「航空輸送時の環境の変化を受けやすく、体調に変調をきたすおそれがある」と説明しています。ANAは期間外でも気温が高い日は留意するよう求めており、「11月なら安心」とは言い切れません。
預ける前に確認したい体調のライン
犬種に問題がなくても、当日の体調によっては預かりを断られることがあります。ANA Cargoは、健康被害が生じる可能性が高い状態を6つ挙げています。食欲がなく元気がない、呼吸が荒く心拍数が上がっている、ふらふらした歩き方、過度に緊張して震えている、大量のよだれ、パニックで吠え続けている、の6つです。該当すればストレスや気温変化の影響をより強く受けるため、預かりを断る可能性があるとしています。
さらに、輸送できない場合として4つが示されています。航空機の利用に適した健康状態でない、妊娠している、生後8週間以内の子犬や子猫、心臓疾患や呼吸器疾患がある、の4つです。JALも暑さに弱い子犬・高齢犬・短頭犬種は輸送の時期・時間に留意するよう案内しています。持病のある子やシニアの子を預けるかどうかは、事前にかかりつけの動物病院に相談しておくと安心です。
注意点3: 公式が「死傷の可能性」を明記している理由と、実際に起きたこと
航空会社が「衰弱もしくは死傷する場合がある」と書くのは、事故が想定されているからです。ANA Cargoはクレートの条件について、「動物輸送時における事故 (死亡・逃亡等) の未然防止を目的として設定」していると説明しています。裏を返せば、条件を満たさないクレートで起きうる事故を、会社として認識しているわけです。
実際に、2024年1月2日には羽田空港で日本航空機と海上保安庁機の衝突事故が起きました。乗客・乗務員は全員脱出しましたが、貨物室に預けられていたペット2匹は犠牲になったと報じられています。ダイヤモンド・オンラインの記事によると、この件をきっかけにSNSでは意見が割れました。「非常時には仕方がない」という声と、「動物を貨物として扱うこと自体がおかしい」という声です。唯一客室に同伴できるスターフライヤーでも、非常時には一緒に脱出できない・責任を負えない旨の誓約書への署名が求められます。
事故のような極端な例を除いても、公式資料からは「事故につながりやすい要因」が3つ読み取れます。1つ目は高温で、夏季の反射熱と短頭種の窒息リスクが重なる場面です。2つ目は体調不良の見落としで、先ほどの6つの状態がこれにあたります。3つ目はクレートの破損や逃走です。ANA Cargoは特定犬種に金属製の強固なクレートを求め、折り畳み式は空港でカラビナやネットで補強するとしています。
わたしたちが確認した範囲では、国内の航空会社が預かり中に亡くなったペットの件数を公表しているページは見つかりませんでした。件数が分からない以上、「めったに起きない」とも「よく起きる」とも言えません。だからこそ、上の3要因を1つずつ潰しておくのが、飼い主さんにできる現実的な備えだと思うんです。
注意点4: 出発前の準備リスト: クレート・当日の流れ・体調管理
準備の中心はクレート選びと、当日の時間配分です。ここは会社の規定が細かいので、数字を押さえておきましょう。
クレートの条件とサイズ規格
クレートは「立ったまま方向転換でき、足を伸ばして立ったり座ったり、自然に横になれる大きさ」が基本です。ANA CargoはIATA (国際航空運送協会) の動物輸送規則にもとづいて条件を定めています。変形・破損しない材質、最低3方向の通気口、不用意に開かない施錠、内側に突起物がないこと、吸水材で液体が漏れないこと、などです。条件を満たさない容器は受託を断られる場合があります。
JALのクレート規格は、小型犬・猫用が幅39〜43×高さ40×奥行54〜59cm、中型犬用が幅51×高さ48×奥行69cmで、いずれも事前予約は不要です。大型犬用は幅55×高さ60×奥行81cm (ボクサー・ウィペット目安) と、幅63×高さ67×奥行90cm (シェパード・レトリバー目安) の2種類です。こちらは事前予約が必要になります。スカイマークは持ち込み・貸出とも51×69×48cmまでで、入らない大型犬は預かり自体ができません。貸出ケージは無料で、小・中・大の3サイズです。
当日の流れと、1週間前からのチェックリスト
当日の時間感覚はスカイマークの案内が分かりやすく、預けは出発の2時間前から可能、手続きは出発30分前までに済ませ、同意書の提出が求められます。JALはペット料金事前お支払いサービスを使い、前日正午までにクレジットカードで払っておくと当日の手続きがスムーズになります。1便あたりの預かり数には上限があり、スカイマークでは当日すでに上限に達していると自社の後続便への振り替えになります。早めの予約と早めの空港到着が基本です。
出発の1週間前には、クレートを部屋に出して寝床代わりに慣らし、かかりつけの動物病院に体調と持病の相談をしておきます。前日には水分をしっかり取らせ (JALも預ける前の十分な水分補給を求めています)、夏季なら日中を避けた便かどうかを再確認します。当日は先ほどの6つの状態に当てはまっていないかを朝に見ておきます。直前の食事は控えめにするのが一般的ですが、何時間前までにするかは獣医師と相談して決めてください。
注意点5: そもそも預けるべきか: 代替手段と判断軸
ここまで読んで「うちのこは大丈夫だろうか」と迷ったなら、飛行機以外の手段と並べて考えてみてください。判断軸は5つです。犬種 (短頭種か)、季節 (5〜10月か)、年齢 (子犬か高齢犬か)、持病 (心臓・呼吸器か)、性格 (過度に緊張して震えたり吠え続けるタイプか)。1つでも当てはまるなら、航空会社自身が注意を促している状況だと受け止めてよいと思います。
代替手段の筆頭はペットタクシーです。全国対応の事業者は引越しや長距離移動にも対応しており、料金は時間制で30分2,000〜4,000円、1時間4,000〜8,000円程度が目安です。長距離だと運賃はかさみますが、飼い主さんが同乗でき、途中で休憩でき、体調を見ながら進める点は貨物室にはない安心感です。詳しい料金体系はペットタクシーの料金相場にまとめています。事業者の実例はジャパンペットタクシーのレビューをどうぞ。
自家用車で陸路を選ぶ場合も、夏場は車内の温度管理が要になります。留守番時の考え方は犬の留守番とエアコン設定が参考になります。万一のときの動きは犬の熱中症の応急処置を頭に入れておくと、落ち着いて対応できます。
大型犬の場合は、選択肢がさらに狭まります。JALは大型犬用クレートに事前予約が必要で、スカイマークは大型犬を預かれません。空港のペット預かり所も同様で、羽田空港公式は「安全な移動を重視して小型犬・猫・小動物のみ」としています。周辺施設の使い方は羽田空港のペットホテル事情にまとめました。中大型犬の飼い主さんほど、飛行機ありきではなく、ペットタクシーや陸路との比較を先に済ませる価値があります。
ANA・JAL・スカイマーク 貨物室預かり条件の早見表
最後に、3社の条件を1枚にまとめます。2026年8月時点で各社公式ページを確認した内容ですが、規定や料金は変わるので、予約前に公式で再確認してください。
| 項目 | ANA | JAL | スカイマーク |
|---|---|---|---|
| 客室同乗 | 不可 (貨物室に搭載) | 不可 (貨物室に搭載) | 不可 (貨物室に搭載) |
| 短頭犬種 | 5/1〜10/31 は13犬種の預かり停止 | ブルドッグ・フレンチブルドッグは通年不可 | 短吻種犬は通年不可 |
| ペット+ケージ重量 | 公式で要確認 | 32kg まで (以上は貨物扱い) | 32kg まで |
| ケージ最大サイズ | 公式で要確認 | 63×67×90cm (大型犬用は事前予約) | 51×69×48cm (大型犬不可) |
| ペット料金 (1路線・1個) | 6,600円 (一部路線 4,400円) | 路線により 5,500〜7,700円 (公式で要確認) | 7,000円 (一部路線 5,000円) |
| 事前手続き | 公式で要確認 | 前日正午までの事前支払いサービス (任意) | 同意書提出 / 出発30分前まで手続き |
料金は片道1区間・ケージ1個あたりです。客室同乗ができるスターフライヤー (1区間5万円) を含めた比較は、姉妹記事に譲ります。表を見て分かるとおり、短頭種と大型犬は「どの会社なら乗せられるか」から確認が始まります。ANAの重量・サイズ規定は公式ページが本記事の確認時点で取得できなかったため、予約時に直接ご確認ください。
まとめ

国内線でペットを預けるということは、空調はあっても暗室で音が大きく、外気温の影響を受ける貨物室にうちのこを託す、という意味です。航空会社自身が「衰弱・死傷する場合がある」と明記し、短頭種や体調のすぐれない子、子犬や持病のある子は預かり自体を断っています。
まずは5つの判断軸 (犬種・季節・年齢・持病・性格) にうちのこを当てはめ、1つでも該当すればペットタクシーや陸路との比較を先に。該当しなければ3社の早見表で条件を確認し、1週間前からクレート慣らしと動物病院への相談を始めてください。うちのこのために、飛行機に「乗せられるか」だけでなく「乗せるべきか」まで考えた上で選べば、どの手段でも後悔は少なくなるはずです。料金と客室同乗の比較は国内線ペット料金と客室同乗の3社比較へどうぞ。
参考文献
本記事は 2026-08-16 時点で以下を確認して執筆しました。
航空会社・空港公式サイト
- 国内線 ペットとおでかけサービス (ご搭乗サポート) — JAL 日本航空 (2026-08-16 確認)
- 国内線|ペットを預けることはできますか。 — JAL よくあるご質問 (2026-08-16 確認)
- ペットのお預かり|手荷物 — スカイマーク (2026-08-16 確認)
- 貨物扱いの動物 (ペット) 輸送について (国内) — ANA Cargo (2026-08-16 確認)
- ペットをお連れのお客様 (国内線) — ANA 全日本空輸 (2026-08-16 確認)
- 【国内線】飛行機にはどのような動物を預けることができますか — ANA よくあるご質問 (2026-08-16 確認)
- 国内線 各種手数料 (ペット料金) — ANA 全日本空輸 (2026-08-12 確認)
- FLY WITH PET! — スターフライヤー (2026-08-12 確認)
- ペット預かり所 — 羽田空港旅客ターミナル (2026-06-11 確認)
専門メディア (経済誌・業界メディア)
- 飛行機に乗せたペットは1年で何匹死んでいるか?大切な”家族”を守るために理解するべき「動物の本能」 — ダイヤモンド・オンライン (連載「ウェルビーイングの新潮流」第7回, 2024-06-03)
- ペットタクシー料金比較2026 — petlife-navi (ペット業界情報メディア, 2026-06-29 確認)
- ジャパンペットタクシー 公式サイト — ジャパンペットタクシー (2026-07-28 確認)
旅行・ペット情報メディア (事例参考)
- ペットは飛行機に乗せられるのか?ANA・JAL・スターフライヤー3社比較 — airticket-mall (旅行情報メディア, 2026-08-12 確認)